「ブラウン管」

ある日
リビングのテレビの色調が
やたらと焦げている事に気づいて
買い換える事にした

ずいぶん前に買ったそれは
重さばかりある21型のブラウン管で
十分大きいな と思っていたのに
店先ではやや見劣りするほどの
控えめなサイズの買ってきたそれは
その位置に据えてみると
その圧倒的な大きさと彩りの鮮明さに驚愕させられてしまった

しばらく呆けたあと
嫁が言った
“なんか、贅沢だね”
僕が答える
“うん、贅沢だね”

二人、肩を並べて正座しながら
画面が流れるのをずっとずっと
黙って見ていた