100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「畑を耕す」

車での通勤途中に
左右を広大な畑に挟まれた
長くて真っ直ぐな一本道がある
片道一車線、信号も無く
車通りも少ないこの開放的な道では
飛ばし屋でなくとも
いささかアクセルを強く踏みたくなる

その日の朝も快調に走っていると
反対車線はるか前方の畑の畦道から
幌のついた一台の軽トラックが
バックでゆっくりと一本道に出てくる
ああ、なんとなく危いな と
嫌な予感がよぎるや否や
激しいブレーキ音と
タイヤの白い煙が巻き上がって
ヤン車が軽トラの土手っ腹に
思い切り突っ込んだ
ヤン車のフロントは綺麗に潰れた

生きのいい若造が降りてきて
「何やってんだよ、テメェ!」と
軽トラの運転席の老夫婦に
怒鳴りつけているのを
路上の破片を気にしながら
ゆっくりゆっくり通り過ぎた

次の日
事故のあったそばの畑で
その老夫婦が屈んで農作業を
しているのが見えた

朝靄の中二人寄り添いながら
これから始まる日差しを背に受けて
何かを抜いてはカゴに入れているのを
減速しながら横目で眺めた

傍らに幌のついた軽トラックは
もちろん無かった