100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「雷雨」

突然降り出した雷雨に
しのげる場所をどうにか見つけ
濡れた肩袖を拭っていると
後ろから声をかけられた
入社当時一緒に仕事をしていた
先輩だった

二、三年一緒に働いて
転勤の後すぐに辞めたと聞いた
それきり会っていない
もう十年も、いやもっと前の話だ
よく声をかけられたなと思った
それに再会するには
なかなか考え難い場所でもあったのだ

かっこいい先輩だった
スマートでスポーツマンで
細身のスーツがビシッと決まるし
女性受けも良くて
管理職候補だと思っていた
ただ人付き合いは下手で敵は多かった
そんな中、
私とは意外とウマが合った

お互いの現状を細々と話し合い
当時の知り合いの近況を
判る限りで交換して
話は尽きた

しばらく屋根や道路を打つ雨音ばかりが響く

小降りになったころ
気が向いたら電話してくれと
メモを渡して
先輩は雨の中に消えていった

会った瞬間から
先輩の十数年が見えていた
私は多分確信できても
声はきっと かけられない