100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「ザリガニ釣り」

当時、家から車で10分くらい走った場所に
これから新興住宅地として街を作ろうとする
雑草もないきれいな更地が広がっていた

そこに幅3メートル程度のザリガニを釣るには
うってつけの川が流れていて
子供の頃、父によく連れて行ってもらった

アサガオのツルでも支えるような
長くて丈夫な棒を竿にして
糸の先にスルメをつけて川に浸らすと
面白いようにザリガニが引っかかった
僕と弟はいつもバケツに山盛りの
ザリガニを持って帰ってきて
庭に設置した水槽で飼うのが楽しかった

ある日、近所の弟の友達も一緒にと
ザリガニ釣りに連れて行った
僕らはいつものように釣れまくったが
弟の友達はすぐに竿を上げてしまうので
全く釣れない
僕らがもっとじっくり川に流すんだよと
教えても待てずに凄い勢いで持ち上げてしまうのだ

釣れる喜びを父も僕も感じさせてあげたかったけど
結局弟の友達は1匹も釣れなかった
帰ってきて好きな2匹をあげるから選んでよ
って言っても遠慮してなかなか選ばない
無理矢理手頃なものを促して持って帰らせた
どちらかといえば
逡巡しているようにも感じながら

一人っ子の弟の友達の家は
なんとなく複雑だった
父親の姿はほとんど見たことがなく
母親がいつも夜に派手な服を着て出かけていく
そんな母からの醜聞を聞いて辛くなった