100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「ブランコ」

夕日がやけに綺麗だった
まだ春の日差しというには
弱々しい太陽が西に傾くころ
僕たちは隣り合わせに
ブランコを漕いでいた
駅前の都市開発が頓挫した
広い空き地に隣接する
小さな公園からは
空がとてもとても広くって
遠くでどこかの学校のチャイムとはしゃいでいる子供の声が聞こえていた
僕はブランコに座りずっと下を向いていた
彼女は黙って隣で立ち漕ぎをしている

キイコ キイコ

ブランコの軋む音が心地よかった
首に巻いた赤いチェックのマフラーと制服のスカートが揺れていた
来春からの予備校の申し込みに行って彼女にたまたま会った
彼女から声をかけられて
ひどく心がざわついた
僕たちはもうすぐ高校最後の年で
何かに急き立てられるように大きなうねりに巻き込まれる直前だった

彼女がたまに話す言葉に
都度都度答えながらも
僕は彼女のスカートの裾の往来を
目の端から離さなかった
そろそろ夕日が暮れる

「帰ろっか」

彼女が言い 手を差し出した
僕は震える手を悟られまいと必死に
でもそして
ぶっきらぼうにそっとそれに応えた