100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「透きとおるような」

夏の野球場にて 改札に向かうエスカレーターの前にいた高校生はずいぶん肌の綺麗な白い人だなと思った真っ黒な黒髪がさらに際立たせていてただショートボブの縛り方が下手だななんて感じながら降り口で抜き去った 球場に入って最上段に座ったら視界の先にそ…

「意に反して」

夏の野球場にて 甲子園常連の私立の強豪校には10人近い女子マネージャーがいた スタンドにニ列になって選手に漏れてしまった数十人の部員と一緒にバルーンスティックを叩いているその中にひときわやる気のなさそうな子がいたおそらく下級の子それは動きから…

「すべてを束ねる」

夏の野球場にて 吹奏楽の音が最初からちぐはぐだった勝手に音が弱まったり始まりがバラバラだったり 指揮がいないのかと見たらきちんといる背の小さい細いちょっと頼りない子だけどなんか変だった その子の指揮は後列には見えないほど本当に小さいそして誰も…

「風が心地よい」

夏の野球場にて 公立校は劣勢だった小さなスタンドに伝統校のOBもたくさんの満席の入り口に金網に両手を入れて撮影をしている子がいる 暑い日にもかかわらず黒いストッキングを履いていたのでそれが際立ってみえる落としたりしないのだろうかと心配になりな…

「鞄に吊るした帽子」

夏の野球場にて 小さくて幼い感じの子だった試合の始まるだいぶ前から前方の席に1人で座っていた縛っていた髪を一度ほどいて髪には縛っていた跡が残っていたそれでまた縛って試合前の選手の練習をスマホでしきりに撮っている少しずつ客席に人が集まってきて…

「あくび」

長ぇな、この話 堪えても堪えても湧き上がるあくびを噛み殺す目尻に溜まる涙を額の汗を拭く仕草で眼に押しあてて話を聞き続けるああ、マスクがあってよかったとふと思ったりする 頭の中は布団への憧れに支配され暖かな毛布に包まれて安堵の吐息をつきながら…

「対話」

そいつは本当に弱くって常に悲観的ですぐに落ち込んでそのくせお調子者で八方美人でかなり怠け者でそれで我に帰って反省すると自己嫌悪になって神経質になってあれこれ考えてほらまた精神が崩れかけている だから都度都度話しかけてやるんだ心の中の状態を冷…

「応援団」

トンボが飛び交い 鈴虫が鳴いていた 黄色いテープを巻いたペットボトルを二本抱えて屋上に向かう声が出ていないと居残りを言い渡された放課後たっぷり応援団の先輩方が一年生の声が出るまでしごき倒すらしい この中学校の伝統行事で部活動さえも運動会までは…

「悲しい結末」

7回裏の6点差ツーアウト満塁カウントはツースリー最後のボールは明らかに大きく外れてミットに収まった 小学生の時からボールを追っかけていた投げて捕って打つそんな単純なことがただ面白かったはずだった入った高校はチームを作れるほど部員がいなかった最…

「ふとした事から」

それは何かの集まりの後だった両親と母の兄弟夫婦それそぞれの子供たちが自営を営む広い祖母の家に集まった20人くらいがつい先ほどまで料亭で飯を食べ日が暮れたあと流れ着いた僕は久しぶりにいとこたちと会えて楽しくてしょうがなかった 大人たちは煙草を吸…

「落とし物」

少年は両親と一緒にショッピングモールに出かけていたいつものお菓子コーナーで何を買ってもらおうかいそいそと物色していると棚の下に何かが落ちているのを見つけた手に取ると女性ものの財布のようだった 母親にその存在を知らせ父親もこれは持ち主もさぞ困…

「サラダうどん」

私と娘は本をよく読む嫁は雑誌以外読んでいるのをみたことがない 以前、図書館や本屋によく連れ立って行った際必ずうんこがしたくなるとトイレに向かうのを見て奇病か!と訝ったが結構あるあるらしい情報が冊子以外からでも十分知りえる現代最近では本のある…

「違う今日」

電車が駅に到着してゾロゾロと乗客が降りる中隣の降り口から張り上げる声が聞こえるバタバタと激しい動きが隣の扉からでも見える“降りろ警察だ” “ちゃんと見ていたんだよ”かなりの悶着の中ひとりの男が引きずり出された野次馬が遠巻きに囲み 車内からの視線…

「仕事があることがありがたい」

勤務先が閉鎖になるそのことで酷くおちこんでいた支店のひとつが無くなるだけなので仕事の補償はされている僕は来月から違うところに配属されるだけだだけど、長くいた場所だから気持ちは未だ整理つかずこれを機会に次も見つけていないのに辞めてしまおうか…

「残像」

帰りの乗換のホームのこと高校の時使っていた駅と似ていてもちろん場所も路線も違うのだけど夜になるとなおのこと蛍光灯やら階段やら見える景色に切なくなるあの時と同じような場所でついつい立っていることに気づく 塾の帰り乗り継ぎの悪い電車を待ちながら…

「ゆでたまご」

悪い報せはやっぱり 未明にやってくるものなんだ 留守電にその知らせは入っていた 淡々と母親が事実のみを伝えて切れていた ああ、ついにこの日が来たのかと 深く深呼吸をした 夏の暑い夜に 静かに祖母は亡くなった そろそろ覚悟しておけと 母親に言われてか…

「遺失物」

帰りの道中で、ある物が無くなっていることに気づいたいつも入れているズボンのポケットに手を入れても無い あれ、鞄にしまったっけと目ぼしい部分を見ても無いついには鞄を下ろして中身を隅々まで見たけど無い思い当たる節があってきっと会社に忘れてきたの…

「ネットワーク」

少し遅めのモーニングをファミレスまで食べに行った平日もっあって人もまばらで店員も少数で奥のキッチンも静かだった最近では珍しくもないタブレットのメニューそして最近目にする机まで運んでくる配膳ロボット ツレが言う 人の仕事はどんどんロボットに奪…