100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「すべてを束ねる」

夏の野球場にて

吹奏楽の音が最初からちぐはぐだった
勝手に音が弱まったり
始まりがバラバラだったり

指揮がいないのかと見たらきちんといる
背の小さい細いちょっと頼りない子
だけどなんか変だった

その子の指揮は後列には見えないほど本当に小さい
そして誰も見ていない
何よりもその子自身が全く集中していない
ぼんやり試合を見てしまったり
髪を直したり
キョロキョロ周りを見たり
指揮のテイを成していない
コントロールしているという意識も皆無だ

指導者もいるんじゃないのか
演奏する生徒達も指摘をしないのだろうか
曲と曲を繋ぐブリッジでは
もはや休憩のように何もしていない
どうにも変だった

相手の攻撃で応援がない時に
様子を見てみるが
誰かと話しているようすがなかった
かと言って無視されているようでもない

終始締まりのない応援は続いたが
とにもかくにもその音で
チアも補欠も父兄も手を叩き踊って
チームを鼓舞するのだ

全体を見ればそれは小さなことではあった

最終回、自チームの最後のバッターが打席に入った
すると顧問らしい年配の男性が
始まりの指揮を力強く振るった
当然今までとは全く違う入りと音の強弱が
心地よく響いた
年配の男性は最初だけ捌いて
元の定位置である後ろに戻って
トランペットを吹いた

その隣にいた彼女はその後所在なく
もう指揮棒を振ることすらしなく
試合を見ていた
いや、見ていたかもわからない

最後のバッターはジャストミートした球を
ライナーで内野手に捕られてしまった