100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「作品」

小学生の娘の夏の宿題で防災のポスター作成が出された多少絵心のある父親がある夏の夜に日本酒をチビチビ呑み娘の絵に助言し筆を片手にほろ酔い気分で手心を加えていくとおお、なかなかいい絵が出来上がった これはもしかしたら佳作ぐらいいけるんじゃないか…

「いまここ」

ひどく心が乱れた日が続いていて多忙な仕事が頭から離れなかった ある日の夜産科病院のサービスとしてディナーに招待された頑張ったお母さんにそしてそのパートナーに美味しい夕食を振舞ってくれるのだ ひどく疲弊していて身体がだるいしかし楽しみにしてい…

「おやすみ」

今日もいろいろあったんですそれでもせこせこと過ぎていきました心はあんまり満たされないけどできる限りで今日頑張れたことちょっとだけ自分を誉めてあげましょうよいろいろ悩みも多いけれど悩んでどうにか成りもしないなら今日のところはゆっくり休んで明…

「どう言ったら」

コロナ対策で定期的に多くの方が触れる場所を拭き消毒する所定の箇所を手際よく回って数十分ある場所で小さな子供が何やってんの?といった顔で見上げてくる ほらほら行くよ、と手を引く若いお母さん立ち去り際に「大変ですね」って声かけられた咄嗟なことで…

「更新」

盛夏の折に届いた免許更新の通知をもう少し涼しくなってからじゃないと汗みずくの暑苦しい顔が収まってしまうだろうとほっておいたら、すっかり忘れて期限間際になってしまった 明日こそ取った休みで行かなければとぐうたらな心を戒め普段は見ることもない財…

「夜中の出来事」

夜中三時に不意に目が覚めた無意識に冷蔵庫の前に特にノドも渇いていないのにコーラを二口 歯を磨き忘れていたので磨きがてらにテレビを付けると 派遣切りされた男が職も見つからず二人の小さい子供と嫁をかかえ借家を追われ生保になるというドキュメントが…

「図書館」

昼下がりの一番暑い時間の図書館の中は適度な心地よさだった あるコーナーの棚をあてもなく目で追うと下段の項目群に興味を惹かれしゃがんだ姿勢で数冊本を開く右手にだいぶお腹の大きな妊婦さんが同じ棚を順に追っていて大変だな、なんて思いながら構わず物…

「煙草」

電子タバコを切らせて鞄の奥底に潰れていた紙巻きタバコを久しぶりにふかした火をつけて最初のひと吸いをするとひと夏の海辺を思い出す 僕達は海に来ていた肩を並べて同級生と海をみている 「BIGになってやるよ」なにでBIGになるんだよ…「何処にいてもわかる…

「アルファロメオの男」

履いているのは先の尖った靴携えている長いもみあげ長身細身のスーツを着込んで煙草を燻らせながら呑気に歩いて出社する どんなトラブルにも優雅に対応して焦る姿など見たことがないいつも落ち着いていて声を荒げることもないバツイチであるがそれに気負いは…

「破損」

朝出がけにコードに引っ掛けてタブレットを落としてしまったある起点から放射状に亀裂が走っている“携帯が割れている女はだらしがない”などとかねてから思っていた彼なのにその時はそれほどショックではなかった しかしながら駅までの道すがら歩いているとじ…

「時空を泳ぐ」

6時35分に3回目の目覚ましで起きる5分微睡んでシャワーを浴びるいつものチャンネルで時間を測って着替えるそのテレビは必ず7時ぴったりに煽り運転やら監視カメラやらのトピックスを流すので胸糞悪い気分になって外に出るそれで会社には8時10分には着く始業の…

「蜘蛛の糸」

夜中に一人で残業をしていると天井に吊るしているパソコンのLAN線から小さな蜘蛛が降りてくる一度降りてきては上がってを繰り返して煩わしかったのでボールペンで絡めて手繰り寄せる 隣の机の同僚は蚊はがんがん殺すくせに蜘蛛を殺すと怒るらしいそんなこと…

「ついて出た言葉」

よりによってこんな日にと家から窓の外を眺める昨夜からの大粒の雪はとどまる事を知らず空からどんどん降りてくる 今日の日のために買っておいた指輪今日は僕の大切な人の成人式だったなのに計画していた色々はそれで全部反故になってしまった でも心は決ま…

「六人目」

17歳の時家に子犬が来た妹が毎日散歩に連れていくらからどうしても欲しいと両親にせがんで我が家に初めての動物を迎えた6人目の家族なので「ロク」と名付けた 黒毛のよちよち歩きの子犬はこたつの柱にうんこをし専業主婦だった母のエプロンのポケットにすっ…

「聞き上手」

なんだか、よくくだらない話を延々と聞かされることがある時期も人も場所も違うのによくもまぁ似たような人種が寄ってくるものだと呆れる 話をしていてすぐに勘づくああ、これはいつものやばいやつだと面白くもなんともないおい、オチは?と言いたくなるお前…

「寝坊」

時計を見ると出発時間をとうに過ぎていたぼやける頭を整理する休みではないやっぱり今日は仕事だと焦る地味に間に合うかどうかきわきわだ神様は絶妙に勝負をかける何とか間に合う方法を模索する顔を洗いながら厳しいと知る それで服を着替えながら言い訳を探…

「ギアを変える」

ギアをローに入れてクラッチを少し上げるエンジンが繋がる感触を得て車が少しずつ動き出す ローからセカンドにセカンドからサードを経てトップ左手はずっとギアの上に乗せている信号待ちの停車ではエンストを恐れてクラッチは切れているにもかかわらず癖のよ…

「デパガ」

平日の売り場は空いていたお昼を回って少しだけ駅に活気が出たけど昼休みに服を買う人はなく同じ姿勢で下りエスカレーターにただただ笑みを投げ続けた私はテナントのしがない売り娘ターミナル駅から歩いてすぐの百貨店の6階にある女性衣服売り場の普通の売り…

「咀嚼」

不安で押しつぶされそうな悩みを脆い脆い心の歯で無理に噛み砕いて一気に飲み込む 飲み込んでも飲み込んでも次々と湧いて出る不安の種を強がりという木槌で粉々に叩いて薬袋に包んで水でむりやり流し込んだ さて、あしたも頑張りましょうか

「演劇」

僕は目立たないように生きてきたなのにさ 秋の文化祭で中3はクラスごとに劇をやらなければならない考えだだけでも舞台にいる自分は耐えられなかっただから高倍率の裏方を志望したそしてジャンケンで負けただから何かの配役に就かなければならなかったせめて…

「私の願い」

人の往来の激しい通勤ラッシュの駅改札口切符が取り残されて閉まったままアラートの鳴り続けている改札ゲートの隣をあえて選んで通過しがけにその切符を抜いていくそういうことをする人間でありたいな

「もの言う人々」

“ぜんぜん人の悪口言わないんですね” って言われた ああ…そうですね って曖昧に返事してふと、考えを巡らす思い当たるとすればあの出来事だろうか 遊園地でのバイトのこと昼休みどきの小さな休憩所はすでに学生とパートのおばちゃんで鮨詰め状態だった遅れて…

「鼻歌」

嫌がる小学生の娘を連れて夏の高校野球を見に行った もう2回の表あたりですでにつまんないとか暑いとか飽きたとかさんざん悪態つかれて試合が終わって帰る時には二度とくるものかとぷりぷりしているので駅前でパフェをご馳走して機嫌をとった 数日後彼女が機…

「昨日の続き」

朝起きるといつのまにか寝ていた昨夜の記憶は曖昧でいつ寝入ったのか何をしていたのか日の唯一の楽しみ 微睡みの時間を堪能できなかったことをひどく後悔して朝の気分は良くなかったこうして昨日の続きが始まっている

「今日の終わり」

日暮れの雨が見える景色を全部青くした帰路の車窓から見えるそれらはまるで水の中にいるようで否応なくかぶさってくる闇に惜しみ焼き付けるように眼を開く今日の終わりは今日の終わりは青いのだ ということ 改札を出てしまうとすっかり外は暗くなっていた

「電車の人」

ある日の夕方学校から塾までの車内で珍しく座れたのででる単なんかを読んでいたのが災いし揺れもやっぱり心地よくてついうつらうつらしてしまった ちょっと疲れていたかな寝不足が続いていたかもあっという間に夢の世界に落ちていく30分の距離を揺られて揺ら…

「赤いズボンとブルーの水着」

母の吝嗇癖は相変わらずのものだった成人になって見るそれはああ、またかで済むが子供の頃のそれは彼の生活に、精神に、深く食い込んでいった 新築への引っ越しによって移った先の幼稚園では赤い運動パンツが必要だった母は彼に赤い普通の半ズボンを持たせた…

「生命」

生きているというただそれだけの幸せ 今日が来たというただそれだけの幸せ 天気は快晴 穏やかな風 それを感じれるだけでも 今日は幸せ さて、今日も 頑張っていきましょう

「呼吸」

力を吸い込み 弱さを吐き出す 強気を吸い込み 弱気を吐き出す 明るさを吸い込み 暗さを吐き出す 善を吸い込み 悪を吐き出す 幸運を吸い込み 悪運を吐き出す 大地から 大気からすべての生物から きっと うまくいくきっと いい方向に繋がる 気を張ってないとあ…

「良いことが起こりますように」

歩道沿いの喫茶店でコーヒーを啜っていた隣の席には老夫婦がモーニングを食べているそれはとってもとっても仲睦まじい 夫の胸元の携帯が鳴りそれに応対するため律儀に店の外に出ていった柵に腰掛け長いこと話をしている妻はそんな様子をじっと眺めていてたま…