100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「ついて出た言葉」

よりによってこんな日にと家から窓の外を眺める
昨夜からの大粒の雪はとどまる事を知らず
空からどんどん降りてくる

今日の日のために買っておいた指輪
今日は僕の大切な人の
成人式だった
なのに計画していた色々は
それで全部反故になってしまった

でも心は決まっていた
たった十分でもいい
「今日」渡して言いたい
“おめでとう”と
それで会場に向かうことにした

電車は朝からずっと動いていない
だから歩いて一駅先の公民館まで
向かうことにした
歩道には誰も踏んでいない積雪が
踏み抜くとひざ下まで埋まってくる
一歩一歩足をもち上げて進んでいく
進むにつれ吐く息の白さが濃くなって
手袋を突き抜けて
寒さが指先を刺していく
雪で車もほとんど走らない
しんとしている一本道を
訳のわからぬ独り言を吐き続け鼓舞して
歩き続けた

余裕を見て出たはずなのに
たっぷり三時間以上を有してたどり着くと
もうぎりぎり解散のタイミングだった
沢山の人で溢れている会場で
晴れ着を着た彼女は
すぐに見つかった
驚きと、そして満面の笑み かわいかった

それでカバンから何重にも
タオルでくるんだ箱を丁寧に解いて
差し出しながら言ったんだ
“ありがとう” って