100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「球場の端」

第二試合目が終わって
客席の人々が慌ただしく入れ替わり
涙と笑顔の入り混じった
スタンド裏の通路がごった返す

日陰でも相変わらず
ジメジメと湿気が肌にまとわって
拭いても拭いても額の汗が
落ち着かない中
球場の端にある喫煙所に
煙草を吸いに行った

ほどなく第三試合が始まって
またスタンドが
にわかに騒がしくなってきた
逆に静まりつつあるスタンド裏を
ゆっくり歩いていると
今試合をしているはずの高校の
ユニフォームを着ている
ひとりの生徒に出くわした
空間に向かって
シャドーピッチングを
繰り返している
足元にはチームメイト達のものと
思われる荷物が沢山並んであった

彼は荷物番なのだ

試合を見ることもできない
応援すらできない
それでもそこできっと
何か大きな志を持った球を
口を真一文にして
ひたすら投げている

ひときわ大きな歓声が湧き
太鼓が響くのを潮に
その場を離れて帰路に向かった

翌朝の新聞で彼の学校が
今日から新チームとなることを知った
彼の代に一歩近づいたということ
あの日
手から離れたその球が
いつかきちんとグラウンドまで
届きますように