100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「鍵盤ハーモニカ」

できないくせにできているように知らないくせに知っているようにそう振る舞うのが昔から得意だった 卒園まであと半年というタイミングで俺は幼稚園を転校した挨拶もそこそこに夏休み終明けから秋の演奏会で披露する鼓笛隊の練習に力を入れさせられた俺は当然…

「吊し上げ」

体育の授業の終わり担任である年増の女教師が語尾を強めて4人の児童を体育館の真ん中に並ばせた学校のそばの大型ショッピングモールに子供だけで行ったのが問題らしい他のクラスメイトは体育座りでその叱責を聞いていた 数ヶ月前に引っ越しできたばかりの僕…

「騙しごと」

従兄弟の結婚式に父がスピーチを頼まれ話の冒頭で僕らが幼い頃独身主義同盟を結んでいたことで笑いをとった そう、確かにそんな話をその新郎である従兄弟と弟とよく話をしていた女なんてめんどくさい、結婚なんかだるいもちろんそれは自分の心を保つための強…

「沈黙と空気」

不思議な体験がある自分に何もないということ 会社の送別会か何かの後に飲み直さないかと同僚に声をかけられた男4人で近くの居酒屋に入ったくだらない話に馬鹿みたいに笑い卑猥な話に声を顰め楽しく会話をして過ごした楽しく? 何時間か過ぎた頃異変に気づい…

「週末のプール」

薄曇りのあまり暑くもない日だったでも8月最後の日曜日ということもあって県内有数の規模を誇る公益プールではその日もやっぱり人が多かった プールそばの木陰はどこもすぐ埋まってしまって俺ら家族はかなり入口近くのアーケードに陣取るしかなかったがスペ…

「不思議な景色」

祖母に連れられて僕たち家族は母の実家である地方都市のちょっと高そうな料亭に入っていった 腰を落ち着けるかどうかのあたりで母が奇声をあげている割烹着を着た店員と何やら声を張り上げて喜びあっているのだ 興奮冷めらやぬまま僕たちに女子高時代の同級…

「花火」

毎日毎日もう勘弁してほしいと思っていた猛暑はいっときの霧雨によってあっという間に絡め取られてしまった 涼しくなった夕闇の公園でよちよち歩きの子供を二人かかえた家族が誰もいない公園で花火をしていた遠い街灯のほの暗い中に灯る一本の蝋燭の炎は綺麗…

「髪切り」

母は絶妙に器用だった子供の頃に学校に必要だった備品体操着や弁当などの袋類は自作だしセーター、マフラーなどもお手なもの趣味で作る紙粘土の壁飾りや人形などは十分金が取れるクオリティだ そんな母のいる家族は皆彼女に髪を切ってもらっていた父などは結…

「ザリガニ釣り」

当時、家から車で10分くらい走った場所にこれから新興住宅地として街を作ろうとする雑草もないきれいな更地が広がっていた そこに幅3メートル程度のザリガニを釣るにはうってつけの川が流れていて子供の頃、父によく連れて行ってもらった アサガオのツルでも…

「復讐」

僕と親友はクラスの女子に虐められていた明確に嫌悪をもっているようではなかったがいじりはもう超えていたなんと言っても僕らは不快だったのだ そんな中2の夏休みに林間学校はあった天候に恵まれた2泊3日の楽しいはずのイベント僕らはやっぱりいじられ続け…

「大輪の花」

仕事帰りに腹に響くような破裂音がして駅の真上に大きな花火を見たああ、今日はそんな日だったなと花火が上がっている最中で電車に乗れるタイミングに安堵した以前花火終わりの乗客で溢れかえった改札口に鉢合わせて酷い目に遭ったのだ もう暑い中誰かと花火…

「青臭くて」

就職したばかりの一年後輩が上司に毎日さんざん怒られ続けて次の春にもうしんどくて辞めたいんですよね、って俺に呟いた 大してキャリアも違わないのになんとか励ましたいと思ってある日ふざけて喋っている終わりしなにあらかじめ書いておいた手紙を渡したま…

「きっかけはいつでも」

ある女性と本の話になった今文学部の学生らしい彼も幼少期からそこそこ本を読む文学少年であったが最近はどうしても選ぶ本が偏ってしまい少し食傷気味で冒険をしてみたいと思っていたそれでお勧めの本を彼女から聞いた 自分では経験できないことや知らない世…

「目標を掲げよ」

ショートカットのよく似合う娘だった 似合ってるねと褒めると小柄な身体のくせにやたらとでかいバイクを乗るらしい あまり詳しくないから想像もつかないよ、と言うととにかく持ち上げるのはかなり苦労するのだと声を弾ませて話を続ける 週末やら休みができる…

「神の宿る場所」

小学校に上がるかどうかの頃彼はいつも寝る前に祈っていた布団の中で手を合わせ神様と会話をするのだ その神が何であったのかはわからない先祖なのか はたまた自分を守ってくれる何かかとにかく毎晩祈ってから眠りについた 何で始めたかもわからないただその…

「川辺の戦い」

川の向こうに敵がいるぞ 対岸の土手に向かって石を投げる家の真裏にある広い土手でそんな遊びを親友とたまにする 僕の石はいつも川に落ちて届いたことがない惨めに波紋を作っていく友達の投擲で放たれた石はたまに届いてその時は2人で思い切り喜んだ 敵を倒…

「一番に」

別れる手前の会話で彼女が「それで一番になりたいんだ」ってそう言ったこんな事で?って思った そんなものだったでも、最後に握った手の力強さに、僕は図らずも狼狽えた もう恥ずかしくて恥ずかしくて多くの人が行き交う雑踏の中をずっと下を向き足速に駆け…

「通り過ぎるだけ」

高校1年の彼は多感に塗れていた田舎者が新しい土地で学びを始め都会の駅の華やかなイルミネーションに心をすっかり掻き乱された この冬に買ってもらったダッフルコートに身を包み誰とも予備校にいる間喋ることもなくひとり寡黙を演じてそのくせ話しかけてく…