100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「吊し上げ」

体育の授業の終わり
担任である年増の女教師が語尾を強めて
4人の児童を体育館の真ん中に並ばせた
学校のそばの大型ショッピングモールに
子供だけで行ったのが問題らしい
他のクラスメイトは体育座りで
その叱責を聞いていた

数ヶ月前に引っ越しできたばかりの僕は
そんなルールなんか知らなかった
昨日だってひとり閉店間際までおもちゃ屋
ゲームを物色していたのだ
沢山の友達から離れて何も知らない街に来て
でも、家のすぐそばに
こんな大きな量販店があることが
すごく嬉しかった

不毛とも思える叱責が1時間を過ぎた頃
地方都市の保守的な考え方に腹が立ってきて
僕はおもむろに手を上げた

僕はこんな近くに立派な建物があるのに
何で子供だけで行ってはダメなのか聞いた
年増は学校のルールだと口角泡を飛ばして宣った

ルールには理由があるのではないか
近くのスーパーはいいのか
バスで行った先の繁華街はダメなのか
遠くに旅行に友達同士で行くことも
学校の顔色を伺わなければならないのか
その線引きは何処なのか
僕たちはもう来年には中学生になる
どうして親同伴で動かなければならないのか
前の街では低学年だって買い出しに行かされた
そう言って振り向き
同じ時期に転校してきた奴に同意を求めた
あまりに過保護ではないのかと

仮に非行の恐れを抱いてとか
余計な揉め事を防ぐためにとか
大人の保身のために
そんなルールを築いたとしても
こんなふうに吊し上げて晒すほどのことなのか
呼び出して注意することで良いのではないか

そして関係のない僕たちはなぜこれを
聞かなければならないのか
この無駄な時間は僕らに一体何の意味があるのか
そう言いきった

年増はブルドッグのように垂れた頬を揺らして
青筋を立てながら足速に体育館から出て行った
立たされていた彼らに転校生の洗礼を
受け続けていた僕は
以後担任からの風当たりが強くなる代わりに
クラスで物言う人間として
それから一目置かれるようになった


…という妄想をしたのだ

結局、僕の言葉は喉から口には出てはこなかった
早くこの話が終わらないかと
びくびくしながら
目立たぬようじっと待っているだけだった