「目標を掲げよ」
ショートカットのよく似合う娘だった
似合ってるねと褒めると
小柄な身体のくせに
やたらとでかいバイクを乗るらしい
あまり詳しくないから想像もつかないよ、と言うと
とにかく持ち上げるのはかなり苦労するのだと
声を弾ませて話を続ける
週末やら休みができるとバイクに乗って
遠方まで走らせるのだそうだ
それでヘルメットを取ったり被ったりするから
髪の毛は邪魔で
だからずっとショートカットにしていると
何かに夢中になれるのは素晴らしい
そういうものがあって
それに全生活を向けるのは素敵だ
先週出かけた秘境の温泉地での出来事をしながら
刈り上げに近い後ろ髪を触っている
走っている時のスピード感とかその時の風とか
そんな話を聞きながら
自分にはそんな夢中になれるものが
無いことを残念に思う
それで何かないものだろうかと身悶えするのだ