「まどろみ」
バルコニーの屋根に所々隠されて
ゆっくり流れていく雲を
引っ張り出したチェアにもたれながら
長いこと眺めていた
時間がとてもゆったりして
日々の身体のこわばりが
徐々にほどけていくのがわかる
大きく深呼吸をしてみると
コーヒーの香りがキッチンからそよいで来て
それがまた ひどく心地がよかった
テーブルにガラス製の3つの空瓶
生けたオレンジの花達が1輪ずつ
水を吸ってこちらを見ていた
みどり色の瓶が太陽に反射して
たまらなく目を細める
「なんで落ち着くんだろうなぁ」
吐息のように誰ともなく
言葉に出して言ってみた
コーヒーカップをお盆に乗せてやってきた母が
「これが実家なのよ」
と静かに言った
見上げると相変わらずのんきな雲が
ゆっくりゆっくりと流れていた