100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「遺失物」

帰りの道中で、ある物が
無くなっていることに気づいた
いつも入れている
ズボンのポケットに手を入れても
無い

あれ、鞄にしまったっけと
目ぼしい部分を見ても無い
ついには鞄を下ろして中身を
隅々まで見たけど無い
思い当たる節があって
きっと会社に忘れてきたのだと
高を括ってその日は眠る

次の日、朝一で机に向かう
あれ、無いや
じゃあこの引き出し
考えごとしていたから
まさかこの引き出しに入れたか
バタバタして出たから
落としたのかも
床を這って見てみる

一番最後に手にしてからの
記憶を呼び起こす
切れ切れな思考の中に
いつもと違う流れがあったなぁ
と思い返す
でもだからといって
突飛なところには
きっと置かない
歩いて落としたのかも
でも音で間違いなく気づく

心配性でいつも、何でも、確認する
だから無くし物なんかめったに
起こさないから
こういう時、何が一番心配かって
それが「無い」という事より
自分がどうにかなっているんじゃ
ないかってこと

探して探して
結局早い段階で推測していたこと
二回電車を乗り継いで
ラッキーなことに
三線とも座れた車内の何処かで
ズボンのポケットから
音もなく
スルリとイスに落ちたのだと

そうなんだ きっと
そうなんだ きっと
そうやって落ち着かないと
なんか頭おかしくなりそうで