100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「大嫌い」

大嫌いな学校だった
望んで入ったとこで無いことに加え
無学無気力無目的
見える何もが嫌だった
制服は帰るや否やすぐ脱ぎ捨てた
友達もほとんど作らなかった
写真は三年間ほとんど撮ってない
早く時が過ぎればいいと
いつも思って過ごしていたあの日々に

ある春の午後に
不意に仕事がはけてたまたま
その学校の試合があることを知って
野球場に足を運んだ
在学していた時から何十年も
試合にもならずに負け続けていた
学校だった

見るだけ無駄かな、なんて思いながら
呑気に日向ぼっこを楽しんでいたのに
ところがきちんと野球になっていた
一進一退の攻防が続いて
次第に目が離せなくなり始めた頃
ファールフライが目の前の座席に
大きな音を立てて消えた

さっきからスタンドの前方に陣取って
ボールが入るたびに取りに動いていた
ブレザーを着た学生らしき男の子が駆けてきて
オロオロ見回すが見つからない

「ない?」声をかける
学生は首を振ってあらぬところを見回す
「そんなとこまで行ってないぜ、ここら辺だよ」と指で示してやる
ほどなく折りたたみの椅子に
食い込んでいるボールを見つけた
「挟まってました、ありがとうございます」

ふふ、いい子じゃないかって去り際に
ブレザーの左胸の校章が見えてはっとした
後輩だった
何十年も前、憎んで憎んで憎みきった
その学校は少し前に
制服が変わったと聞いたことがあった

だから気づかなかった

試合を観ながら色々な事を思い返した
本当は自分もきっちり
その中のひとりだったんだって
きっとそんな自分を
見たくなくて見ない振りしていたんだって

ベンチから響く大きな声
最後まで絶えず躍動するグラウンドの選手
激しく手を叩くスタンドの父兄や生徒
最後の飛球に足を止めたライトが
手を広げた時

これが自分の母校なんだって
初めて思えた