100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「盲導犬」

夕方のラッシュのピークが
少し過ぎた頃
乗換の駅から各駅停車に乗った
次の駅が終点なこともあり
人もまばらで
乗るなり歩く勢いで席に座ると
目の前に盲導犬
大人しく腹を床につけて
くつろいでいる
高齢の主人は爆睡中だった
周りの乗客も見るともなく
視線を這わせ
その佇まいに感心していた

まもなく終点に着くとのアナウンス
その子はスッと立ち上がった
おおっ、と
すごいなぁとか、賢いなぁとか
感嘆の声もあがる
もはや、もう皆
覗き見から凝視に変わっている
興味はこの賢い子が
どうやって主人を
起こすのだろうかという点である
ところが駅に着いて
ゾロゾロと乗客が降りていっても
なかなかアクションを起こさない

誰もいなくなった車両に
業を煮やしたサラリーマンが
主人の肩を叩き
駅に着いたことを知らせる
S駅に着きましたよ
西口ですか?東口ですか?
一緒に行きますよって
すると主人は嗄れた声で言うのだ
さっき私が乗り込んだ駅で
降りるのだと

すっかり
寝過ごしてしまったらしい

苦笑いするサラリーマンが
反対側のホームに案内する横を
その子はすまして歩いていった