100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「提灯の下」

狭い道路の両面に華やかな出店
提灯のあかりがずっと続いていた
小学校に上がりたてか幼稚園生か
浴衣に着飾った姉妹が
母親に連れられて
人でごった返すその路地を
覚束なく歩いていた
歩くたびカラコロと鳴る
下駄の音が心地よく
買ってもらったばかりの
ウインナーを
おのおのが必死に頬張っていた

姉が食べていくたび出てくる
串を邪魔に思い柄の部分を摘んで
ウインナーを押し上げる
するとつい力が入りすぎて
串から全部落ちてしまった

一瞬の沈黙の後母親がなじる
姉は悔しくて仕方がない
嗚咽と涙がとめどなく流れる

するとさっきまで周りも気にせず
夢中で食べていた妹が
なんの躊躇も無く
自分のウインナーを
姉に差し出した

自分ももっと食べたいだろうに
姉は泣き止んで妹の頭をなでた
妹は嬉しそうに微笑んだ
今度は慎重に、慎重に
ウインナーを押し上げて

仲良く齧りながら
提灯の下を歩いていった