100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「反撃開始」

歩けるほどの
小さい子供を抱えた夫婦が
指定席でサッカー観戦をしていた
お父さんと子供は
ホームチームのユニフォームを
身に纏うが
お父さんだけが
目を血走らせていた
贔屓のホームチームは時間を考えても
かなり劣勢だった

お母さんがすでに飽きている
子供のトイレに席を外して
しばらくすると
目の覚めるような
ミドルシュートが相手ゴールを
揺らした
激しくスタジアムが揺れる

反撃開始である
しかし時間はあと僅かしかない
なお一層声援に熱が入り場内にこだまする
呑気に席に帰ってきたお母さんに
「おい、一点返したぞ!まだだよ!まだだよ!」と
バシバシ肩を叩く
けれども叩かれた肩をさするお母さんに
その温度は全く伝わってこない

お父さんの最高潮のまま
終了のホイッスルを聞く

遠くに見える相手チームの歓声を残して
周りが静まりかえる

“さぁ帰るよ”
お母さんの掛け声に
うなだれながら
席を立つお父さんを
子供が不思議そうに見上げていた