100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「帽子」

大柄な外国のお父さん
歩けるくらいの男の子と
日本人のお母さんと
ホームで電車を待っていた

暑くて暑くて
じっとりと首筋が滴る土曜の昼下がり
のそりのそりやってくる電車に
皆が涼しさを求めてじりじりと前に詰めてくる

扉が開いてひんやりした風が流れて
その家族も乗り込もうとした
と、その時
男の子が電車とホームの隙間に手にしていた帽子を落としてしまった
はたして罵声が飛び交うか
私は無意識に身構えた
しかし夫婦は静かに後ずさりし
電車から離れていっただけだった
責める言葉は一言も発せられないまま

扉はゆっくり閉められて
ただ冷気が彼らを置いていっただけだった