100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「都会の雪」

関東で昨夜から降り続ける大雪は
平日の朝のラッシュを
案の定大混乱にした
電車はダイヤを大きく乱して
ノロノロとやってはくるが
どれもこれもが満杯で
開いたドアにはほとんど人が乗り込めない
次々とコンコースから人が降りてきて
ホームに並ぶ人の列が
前へ前へと押し出される
最前列では雪の吹き込みで
屋根が意味を成さず
傘をささなければならなかった

乗れぬ電車をいくつかやり過ごす

「これは参りましたね」と
最前列の傘の紳士が
身震いしながら隣の青年に声をかける
「いつ乗れるんですかね」と
雪に傘をかざして青年が苦笑いをする

行かねばならぬ理由を
今日の天候の行方を
凍えながら細々と語り合う
さらにいくつかの電車をやり過ごし
やっと数人は乗れそうな電車がやって来て
二人乗り込もうとするが
青年の方は無理だった

紳士が“悪いね”と
見知らぬ青年に会釈し
青年が“お気をつけて”と
見知らぬ紳士に右手で応えた

パンパンに押し込まれた
通勤電車は
歩く速度でゆっくりと
ホームを慎重に抜け出して
未だ降りしきる雪の白い壁の中に消えていった