「落とし物」
少年は両親と一緒に
ショッピングモールに出かけていた
いつものお菓子コーナーで何を買ってもらおうか
いそいそと物色していると
棚の下に何かが落ちているのを見つけた
手に取ると女性ものの財布のようだった
母親にその存在を知らせ父親も
これは持ち主もさぞ困っているだろうと
店員に声をかけ財布と共に記録のため
バックヤードに誘われた
館内放送が流れる中
お礼なんかもらえるかも、なんて
邪な気持ちもちょっと持ちつつ
持ち主が見つかるのを待っていた
程なく若い女性が現れた
でも予想していたような
ホッとしたとか安心したとか感謝みたいなものは
一切なくて淡々としていて拍子抜けした
無くした事に気づいていなかったらしい
お礼の言葉もなく肩透かしを食らったので
では、もう行きますと
家族3人で部屋から出て行くと
しばらくして店員が追っかけてきた
こんな小さな子が一生懸命持ってきたのに
あの態度はどうなんだとたしなめたのだと
そう言って置いて行った2000円を
少年の手に渡した
少年はいつもよりも少し高いお菓子を
買ってもらった
けれども、なんだかちっとも嬉しくなかった