「お気遣い」
小腹が空いて
ふらと目に付いたチェーン店の
カツ丼屋に入った
昼飯どきとあって店内はやや混んでいて
ぽつぽつと空いているカウンターを
数席超え見つけた二人用のテーブルに
腰掛けた時
後方の入り口にこれから入ろうとする
何グループかの姿が見えてしまった
だから冷茶を給仕に来た店員に
“カウンターに移りましょうか?”
と声をかける
するとその若い女店員は
ちらとカウンター席の状況を見て
「大丈夫です、
お気遣いありがとうございます」
と随分丁寧に応対してくれた
携帯をいじりながら
程なく届いた注文の丼物を頬張って
どんぶりの半分まで無くなった頃
ふと、思い出したようにつぶやいた
”お気遣いありがとうございます” か
そいえば彼女はいやにハスキーな声だった