100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「応援団」

トンボが飛び交い 鈴虫が鳴いていた

黄色いテープを巻いた
ペットボトルを二本抱えて
屋上に向かう
声が出ていないと居残りを言い渡された
放課後たっぷり応援団の先輩方が
一年生の声が出るまでしごき倒すらしい

この中学校の伝統行事で部活動さえも
運動会までは中止だ
味方を鼓舞するための団歌をかけ声を
声枯れるまで歌う
くだらないなどと言う人間はいない
もはやその伝統は洗脳にも近い

そしてターゲットはいつも
最下級生だ
男子には鉄拳すら飛ぶ
女子にも容赦なく罵声が飛び
皆、涙する

先輩も怖けりゃ
その上の先生も怖い
怒られないように
怒鳴られないように
そして、目立たないように
空に向かってひたすら
声を張り上げる

ただ苦しいだけだった
人生はもっと気楽で
楽しくていいんじゃないのかなぁ

すっかり秋めいたその日の夕方
トンボが飛び交い 鈴虫が鳴いていた