湯船に浸かって
ボーっと椅子の雫を眺めていた
滴れずにその場で気化してしまうかもしれない微妙な大きさの雫
この雫に自分を委ねてみる
もしこの雫が床まで滴れたら辞めることにしよう
瞬きもせずじっと息を潜める
もしこの雫が床まで滴れたら辞めることにしよう
換気扇の音だけが浴室に満ちていた
もしこの雫が床まで滴れたら辞めることにしよう
ずいぶん長い時間が経った
ああ・・
馬鹿馬鹿しさと諦めに湯槽にもたれようとした時
一滴の別の雫が椅子の上部の淵から閃光のような速さで滴り落ち 絡めとって床にたたき落とした
水面を叩き浴室に歓喜を響かせる