100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「電話」

電話のベルが鳴った
もう小学生の中学年ではあったが
物音ひとつしない家で突然鳴り響いたその
まだ不慣れな機械に慄いた
さんざん迷ったあげく
6コール目で受話器を取る

“はい、Sです。”
“Nと申しますが、T君居ますか?”
“はい?” 聞き返す
“Nと申しますが、T君居ますか?”

それはクラスメイトのNからで
そしてTとはやはり同じクラスメイトで自分と同じ姓のSである
連絡網をひとつ見間違えているのだ
馬鹿だなあ間違えてるよと
言える仲でもない
しかし、そんな人は居ませんよ
と冷たくあしらえば
面が割れた時に具合が悪い
何で取ってしまったかと
そんな後悔ばかりが積もっていって
長い思考の末
そのままゆっくり受話器を置いた

部屋の隅でしばらくうずくまって動けないのは
再び鳴ることを恐れていただけでは
決してなかった

翌朝
NとSが昨日の電話の話をしながら
教室に入ってきた
変なことがあったのだと
それを耳にすることになるあまりの偶然さに
それが何かの啓示ではないかと思ったりするのだ