100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「意思疎通」

算数セットというものがあった
子供が手で抱えるくらいの大きな箱の中に
数を数えたり時計を読んだりする訓練のための教材
ある日の自習に隣の女の子と対になって
それを使って勉強するという時間があった

周りの同級生が和気藹々と進めている中
僕たちは最初から噛み合わなかった
おはじきを持って来てやろうと言っても
彼女は違う物を持ってくる
足し算カードを出し合おうと話しても
意志がうまく伝わらない

僕はついに彼女を泣かしてしまった
彼女を置いてひとりでイライラしながら
適当な教材をやった
周りの奇異な目に晒されながら

僕も昔から人付き合いの難しい人間だった
何が正しくて何が間違いなのか
いつも手探りで生きていた
小学校上がりたてのあの頃は
あらゆるものが苦痛に塗れていた

それは今もあまり変わらないけれど

僕があの時ひどく罵った彼女
彼女は翌年、養護学級に移っていった