100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「祭り」

「ここはお祭りとか、無いんですか?」
この発言に誰もが振り向いた

越してすぐに参加した新参者のママさんが
町内会の集まりで発した言葉である
地方都市の転勤族が集まる
典型的なこの集落は
ずっとそこに住んでいる人の方が少なく
地域に伝統とされる行事は皆無だった

そこで彼女は祭りをやると言い出した
昼に神輿を児童が担ぎ
夜に近くの公園でやぐらを組んで
盆踊りをする
店を開き提灯で装飾する
それを
無から始めて三ヶ月で実行する

もはや壮大である
めんどくさい 嫌になる 普通は
しかしながら
彼女のバイタリティは
周りを強く引き込み結束させた
そういう力を持った人なのだ

借りているアパートの空き部屋を
交渉して事務局として使い
近隣で商売している店に
協賛金を募り
当然最高学年の息子も駆り出された
下の子達の仕切りに回り
同級生達と神輿を作り
公園の装飾に奔走した

当日
花火こそ上がらないが
それは恐ろしほど見事に祭りとなった
子供たちの笑顔、大人達の活気
なんだなんだと人が集まり
大盛況だった

結局彼女達は2年でその土地を離れた
彼女は誰よりも人から惜しまれた
そして残念ながら祭りは
その2年で終わってしまった

風のように現れ去っていった

彼女のその後は知らない
でも、きっと次の場所でも
同じように風を起こすのだろう
あの時感じた夏の宵の熱気そのままに