100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「英語の先生」

小学生の時 家の前の平家に
若い女の先生が住んでいた
近所の私立高校の英語科の専攻で
せっかく近くに
いい教材があるのを
使わない手はないくらいに
母が隣家の同級生の母親と共謀し
お金を払うから
是非うちの子達に英語の基礎を
教えて欲しいと頼み込んだ
先生は断り続けたが
結局強いごねに
折れるしかなかった

ある夜僕は半ば嫌々ではあったが
同級生と一緒にお邪魔して
授業を受けた
渋ってはいた先生だったが
部屋のあらゆる物に
英語表記を施しており
その腹の括りに好感を持った
その日はノートに
アルファベットを書いただけだったが
多少なりとも初めて触る
異国の文字に
興奮を覚え 当初とは裏腹に
次回を待ち遠しくさえ思って
帰ってきた

ところが二回目が
いつまでたっても行われず
結局それきりになった
何か大人の揉め事が
あったようだった

しばらくした後
先生はその家で教え子と同棲し
結婚して引っ越していった
母のその話をする時の端々に
隠しきれていない刺々しさを
感じることからもそれがわかった