100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「てがみ」

車を買い替える都合で
お得意さんが任意保険の
解約を申し出た

個人代理店の私とは
ずいぶんと長い付き合いを
してもらっていた
最初の契約の時には
一人暮らしの家まで
出向いて行って
不器用ながら精一杯もてなそうと
している若者に好感を持った

それ以降は会ってない
二年に一回更新の時に
お伺いをする
それだけの付き合いだ
ある時は住所にアパート名が
無くなって
結婚して家を建てた事を聞いた
ある時は電話口で赤子の泣き声
子供が生まれたらしい
変化が他人事ながら微笑ましい
そんなことが十数回繰り返された

解約する事を聞かされて
少し残念だった
若者も少し寂しげだった

送った手続きの書類には
感謝の言葉を添えて入れた

後日届いた書類には解約届と共に
たくさんのエピソードを
書き記した
温まる手紙 “ご自愛を” か…
そうか、そうか
あの若者がもう立派に
壮年期を生きているのだからな
それは私も歳をとるはずだ