都電に揺られて
僕たちは公園に向かっていた
初夏の本当に気持ちのいい日で
彼女もなんだかいつもより
はしゃいでいるように見えた
駅前の店で買った使い捨てのカメラと
揺れるたびにちゃぽちゃぽ鳴る水筒
木々を通り抜けるたびに漏れる
陽射しが二人をまだらに彩っていく
若くて 若くて
他の乗客の隙を伺い
レンズをこちらに向けて
はにかみながらも撮った一枚は
小さく寄り添う番を
当時の心まで綺麗に切り取って
そして
少しずつ少しずつ
色褪せていった
それは古い古い記憶の断片
今は、その記憶よりも深い深い
押し入れの奥にしまってある