100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「教師」

今思えばずいぶんぶっ飛んだ先生だった
小学二年の時の担任の先生は
ヤンキー上がりのような激しい男だった
低学年の担任を担う先生が
男というのも珍しいが
期間限定の産休先生であることが
そのミスマッチを良しとしたのだろう

新任だった先生は
初日はずいぶん緊張していて
下の部屋が保健室で安心だ、安心だ
というような話を何回もしていた
ところがその緊張が溶けるや否や
恐怖政治を敷きだした

忘れものをすると男女構わず怒鳴り散らし
床に臥床させ両脚を浮かせる姿勢
通称”腹筋”という罰を
その授業の間ずっとやらせた
それが怖くて忘れ物に気づいた時
慌てて休み時間に脱走して
家に取りに行くことも度々あった
ある日は授業内容の覚えが悪くて
気分を害しひどく怒った後、雨の降る中
全員を外に出して校庭を走らせた
学校で有名な
イカれたクラスとなった

しかしながら授業参観の
父兄たちの評判はかなり良かった
きっと外面はいいのだとその時は思った

またある日
体育の授業で隣のクラスの四組と
ドッチボールをやった
何度やってもボロボロに負けて
負けず嫌いの先生は四組の担任に
泣きの一回を何度もせがんだ
そしてまたボロボロに負けた
以後事あるごとに勝負を仕掛けた
そしてやっぱりまた負けた
誰よりも先生が悔しがっていた
でもいつもは馬鹿みたいに怒鳴る先生が
負けてしょげて帰ってくる僕らを見て
責めないのが不思議だった

それは別れが
すぐそばまで来ている頃だった

肌寒くなった頃
クラス対抗のドッヂボール大会が
迫っていて
僕らは放課後に練習した
今度は強制ではなく自発的だった

結果僕らは嘘みたいに連戦連勝し
最後に一度も勝てなかった
四組にも勝って優勝した
誰よりも先生が喜んでいた

餞別の色紙には
次の先生の時は忘れ物をして腹筋を
させられないように気をつけますと書いた

それから半年後、母親から
近くのデパートの駐車場で
でかいバイクにケバい女を
後ろに乗せて革ジャンで
走っていく先生の姿を目撃したと聞いた

なんとなく
あの先生らしいなと思った