「ヘイ•ポーラ」
彼女はいつだって渦の中心にいた
三送会にクラス毎で
出し物をすることになった
題目が決まらぬまま行き来する中
彼女に白羽の矢がたった
彼女は二つ返事で請け負った
フランス語の曲を
ステージで披露する 一人で
文書で歌詞を起こし
擦り切れるほどレコードを繰り返し聴き
徹底的に仕上げたおした
階下の弟が「俺まで覚えちまうよ」と
怒鳴り込んでくるほどに
その日のステージ上
真っ赤なドレスを身に纏った彼女は
女子高特有の熱気を支配して
華麗に舞い
その視線を釘付けにした
割れんばかりの拍手喝采を
先輩から、後輩から
スポットライトの下で独り占めにした
人生は儚い
目立たなければ物事はあっという間で
楽しまなければ命はあっという間だ
だから それを知っているから
彼女はいつだって渦の中心を好み、居続ける
彼女は今老人ホームで未だ華麗に舞っている