100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「マジック」

冬休みの最初の日
その日はクリスマス会が
近所の公民館で開催されるのが
この町内の慣例だった

今年は通学班ごとに
披露する出し物に手品を
一人ずつすることになった
彼は市販で売っていた机に立つ
トランプの芸をすることにしたが
三つ下の弟のネタが
前日まで決まらなかった

そこで両親が必死になって考え
プリンのカップを二つ使用し
一つのカップには穴を開けて
あたかも布が通り抜けるように
見せるネタを提供したが
それは明らかに仕掛けが丸見えで
あまりにも稚拙のように見え
彼は心配で仕方がなかった
練習もそこそこに本番を迎える

クリスマス会は当時既に
「時間の拘束の不満」が「慣例」
を上回っており
その上、段取りの悪さも相まって
子供達のフラストレーションが
次第に溜まっていっていた

後半の出し物の時には
その鬱憤を晴らすかのように
つまらない、面白くないが横行し
彼らの手品の番には
もう手がつけられなく
彼のネタにも
かなりの罵声が飛んだ

ついにトリの弟の番になった時
彼はやろうとする弟を制し
班長にやらない事を伝えて
自分達の班の出し物を
締めてしまった

家に帰って
両親に結果を聞かれた弟は
兄の指示で
やらなかった事を伝えた

当然両親は彼に
何故、やらせなかったのか
と強く非難した

彼はただただ、黙ってそれを やり過ごした