100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「猫」

家を出る寸前で
嫁に呼び止められた
サッシの向こう
二軒先の家の出窓に
三毛猫がじっとこちらを見て
佇んでいる
ほらいたでしょ、とご満悦の様子

数日前その出窓に
置物のように動かない猫がいると
嫁が騒いでいた
家中どうでも良いと思っていたが
あまりに動かなかったというので
やっぱり置物ではないのかと
皆が訝っていることを
ずっと彼女は
不満に思っていたのだ

じっとこっちを見る猫に手を振ってみる
でも反応はない じっとしている
でも多分生きている

そんなことをしていたら
時間に余裕もなくなって
あわてて鞄を肩にかけて
ロスした分急いで家を出る

走りながらふと思った
近所の家に猫がいること、
そんなことなんかより
「おい」や「ねぇ」ではなく
名前で呼び止められたこと
もう何年振りかのこと
そのことの方が私にとっては
はるかに驚きだった