「割に合わない」
夏に引越しのバイトなんか
ずいぶんとニーズの無いものを
選んだものだ
いつまで経っても依頼の電話が
やって来ない
今日は居ても立っても
居られなくて
わざわざ事務所まで足を運んだ
なんだって1時間もかかる場所
交通費も出ない仕事
などとふつふつと思う
ただ日払いであることとか
日にちが選べる仕事ということとか
今ののっぴきならない都合が
そんなわけでここに縋っている
陽が遮られるとひどく暗い事務室
全く効果のない扇風機
ええ、無いですねえ、と
面接の時午後になると必ず
頭痛がすると
ボヤいていた管理者が
今日も渋い顔でこめかみを
抑えながら言う
西日が軒先に立つ顔を
ジリジリ焼いて
拭いても拭いても滴れる汗に
じっとり湿るタオルが
無性に腹が立ってきて
二度と来るものかと踵を返した