100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「唐揚げ」

カレーに唐揚げが乗っていた

学生の頃
片道2時間半の通学電車に
ほぼ毎日朝から夜までの授業
日曜に入るバイトだけが
唯一の資金源だったあの日々
その雀の泪もほとほと消える
そして昼メシに捻出する金が特に
なかったことを覚えている

ある日は仲間の輪から静かに離れ
家で作ってきたおにぎりを一人
図書館のロビーで食べた
ある日は猛暑の昼下がりに
昼食後の飲料を求め硬貨を握りしめて
自販機の前で数十分ウロウロした
そんな彼がバイト代が出た後の
懐のまだ暖かい時は学食で昼食をとった
よく食べたのが220円の
油あげの乗っているだけのきつねうどんと
250円のカレーライス
50円の唐揚げ
カレーへの憧れのトッピングは
その50円分の贅沢は
どうしてもあげられなかった
結局 在学中に手が届くことはなかった

あれからずいぶんと月日が経って
社会人となりそんなもろもろのことなど
すっかり忘れていたのに 
不意に、夕食に当時の憧れが現れた

まじまじと眺めたあと
かるく絡めて口に含んだ
いかにも冷凍食品らしい味だった
あの時の唐揚げは
どんな味がしたんだろう
きっと後悔も不安も憎悪も惨めさも
その香ばしさに混ぜられていただろうか
こんなことを考えながら
この味気ない油物を
一気に噛み潰して飲み込んだ