100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「ソファー」

自分はちっとも悪くないって
そう、思っていた

妻と話をしなくなってから
もう一年以上も経つ
玄関で会っても
階段ですれ違っても
お互い目を合わすこともない
私は家族のためにただ金を運び
彼女は家庭のためにただ家事をした

リビングにはソファーが据えてあって
そこに彼女はいつも座って
韓流ドラマを見、携帯ゲームをやる
私がそこに座ることはない

そのソファーのこと
まだ会話が成立していた時
リビングにソファーを買いたいと
彼女が言い出した
仕事が上手くいっていなかった私は
当時ひどく心が荒んでいて
家具屋であれはどうか、これはどうかと
いちいち聞いてくる彼女にひどくイラついて
何だっていいよ、好きなものを買えよって
一人でふらふら
歩いていってしまったことを思い出す

どれくらい前の出来事だったろうかと指折る
それ以来ぶりに
ベッドを見に行きたいという娘と二人で
その時と同じ家具屋に行った

日曜日の昼下がりに
沢山の家族がいて
沢山の会話が飛び交っていて
沢山の笑顔が咲いていた
何だか居心地が悪かった

その日の夜
皆が寝静まったリビングで
薄明かりの中そっと座ってみる
いつも座っている場所の彼女の窪み
小さな小さな積み重ねが
戻ることのない弾力のように