100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「終わりの景色」

高校の生物室に
僕のマウンドがある
生物部の活動に飽きてしまうと
スーパーボールを取り出し
一定の距離を空けて
引き出しに向かって
ボールを投げる

一番上の引き出しから
下から二番目の引き出しまでが
ストライクゾーン
そこにキャッチャーの残像を
映し出す
引き出しの縁にあたって
下に跳ねればゴロでアウト
上に跳ねればヒットだ

汗みずくの白衣を脱いで
大きく振りかぶる
もうひとりの部員はもう
ずっとパソコン雑誌を見ている
ワンアウトランナー一塁
渾身のストレートが
机の角にあたって
大きくバウンドし
開け放しの窓から出ていって
慌てて後を追いかけた

窓の外へ顔を出すと
空に大きな入道雲
グラウンドから
蝉の時雨と
野球部の掛け声
夏の終わりの暑い風が
そっと僕の頬を撫でて
それを知らせる