100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「最後の選抜」

公式戦には出た事はない
むしろベンチにすら入れていない
だが彼は三年間休まずに
頑張ってきたつもりだった
周りに焚きつけられて
始めただけのものなのに
同級生は三十人
結局バスケを好きになれずに
現役を終わりそうだった
高校ではもう
やるつもりはない

最後の公式戦
ベンチの最後のイスを
親友と競うことになった
決着は三本のフリースローだった

先行の親友は
一投目と二投目をリングに当てた
彼は恐ろしいほど
静かになっていく心に驚きながら
ネットの乾いた音を二回鳴らした
すでに勝負ありだった
しかし大きな歓声が上がっても
ニコリともしなかった
三投目を親友は収め
彼のボールはボードとリングを叩いて
大きく跳ねて飛んでいった

練習前のその選考が終わって
アップのランニングをしていると
並走してきた親友が
彼の肩に手を置き苦しそうに言った

目を伏せたまま「まぁ頑張れよ」って

チームで気合を入れて
挑んだ最後の大会は
初戦であっさり負けた

結局スタメンと少しの
サブメンバーが出ただけだった

ちっとも悲しくなんかなかった

彼にとっては
あの日
最後のフリースローが外れた時に
もう終わっていたから