「湯気」
傾きを増した夕日が露天の湯船を
煌びやかに照らす
湯気に囲まれてほっと息を吐きながら
空をみた
それほど広くはない浴槽の対面に
若い男が三人同じように
空を見ていた
「こんなに三年間があっという間だとは思わなかったよ」
一人がおもむろにそんなことを云った
こっそり聞くにどうらや
今日高校を卒業したらしい
そんな日に風呂に入りに来るなんて
なかなかおつじゃないか、って
そう思いながら浮かぶ手で湯をかき混ぜ
人生のだいぶ先輩はそれから顔を洗った
ふと、その手はそのままに顔を覆い
ゆっくりと息を吐く
静かに息を吐ききっていく
“これから先もあっという間だぜ、きっと”
ああ、少しのぼせてしまったようですね
立ち上がって
はしゃぐ彼らの横を、湯だった身体で
通り抜ける