昨日まで普通に話していた老婆が
次の日には動かなかった
一人暮らしの平屋の
いつもは開いている時間の雨戸が
今朝は途中で止まっている
その不自然さが
いつもと違う予感を嫌でも
周囲に漂わせた
救急車が 警察官が
慌ただしく時が過ぎたその日の夕刻
その借家に家主はいなくなった
生存する親族とは良好ではなかった
でも若い世代がこの土地を離れ
老人たちだけ残る集落のその結束は
それほど居心地が悪いものではなかった
お盆も近いこの蒸し暑い時期に
その骸は速やかに荼毘に付された
“明後日には庭の野菜の苗を植え替えるよ”って
死が不可避であるならば
こんな最期はうらやましいって
そんなことを
考える