100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「手のひら」

少し肌寒い夕暮れの午後
赤信号で車を停めると
向かいのバス停のベンチで
腰掛けている中年男性を見た

一見しても決して立派とは言えない身なり
膝の上の小さなよれよれのバッグの上で
じっと両手を見つめている

ずっとずっと長いこと
彼の後ろには煌々と灯る店の灯り
BMWのディラー店の眩しい灯り
ずっとずっと長いこと
その光で両手を見つめている

後ろのクラクションに急かされて
アクセルを慌てて踏みつけた