100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「命の重さ」

大学を卒業して2年後に先生が死んだ

恩師と呼ぶには心許ないほど思い出は無いが
大学院に進んだ同級生が同じ研究室だった仲間に
電話をかけまくってくれていて
その恩義と昔の仲間に会えることで
重い足を運んでいった

葬儀は大学の側の葬祭場で催され
それは立派で大きな看板が門に据えてあって
間違えようがなかった
そしてたくさんの人ですでに溢れかえっていた

人混みの中、葬儀屋の係員がさっきから
声を張っている
“申し訳ございませんが、こちらの線からはみ出さないでください”
門を入る時に ああ、キツイなと思っていた
先生の4分の1程度の看板が
対面に立て掛けてあったのだ

それ以降も
どんどん老若男女の
教授の教え子達や大学関係者が入ってくる中
旧友に卒業以来会う
数年のサラリーマン生活が再会の言葉を
かしこまらせた

また係員の声が聞こえる
“こちらの線から内側にて参列お願いします”

後輩の子に声をかけられる
残していってくれたアンチョコに助けられたと
声を抑えて笑顔で話してきた
ちらと目の端で対面の参列者を盗み見た
みんなこっち側の人の多さに縮こまり
圧倒されているようだった

それ以降も構わず参列は膨らんで
蛇行させ隣側を圧迫し続けている
係員の注意の声が遠くから虚しく響いてくる