100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「モニター越しの風景」

時計が八時を回る頃
階下のチャイムが鳴った

二回目の音を聞きながら
下へ降りると困惑した妻の顔 
出てと顎で促されて
モニター越しの
四十代位の男性に声をかけた

「A新聞ですけど、Y新聞の契約三月までですよね。どうかお願いしたいんですけど・・」

妻が私に出させたのは断れということか

「すいません。三月で転勤になるかもしれませんので・・」
「いっぱいサービスしますので」
「申し訳ございませんが、転勤ですのでどうかご理解してください。」

この冬一番の強い風が
モニター越しにも見て取れる

「そうですか・・だめですか・・」

ひどく落胆してうなだれながら
影に消えていった

「すいません・・・」

モニターを離れ
食卓に座って聞いた
「お前なんでYがいいの?」
「どっちでもいいけどさっきのA新聞の方が少し安いんだよね」
「じゃあ契約しても良かったんじゃないの?」
「別によかったんだけど、あんたが勝手に断ったんじゃない」

「え?お前が出てもよかったんじゃないのか?」
「だって化粧してないから」

「この、ばか!!」

あわてて出た玄関の先は
ひどい寒さだった

こんな時間にあの落胆ぶり 
何件獲るまで帰ってくんなとか
言われているのだろうか

走って辺りを見回したが
もう、どこにも姿は見えなかった

強い寒風が頬を絶えず打ち付ける

生きていくために家族のために
どうか どうか
頑張ってください と願うばかり