「バスを待つ」
初詣に向かう大きな神社までは
最寄の駅からバスに乗る
着いた時並びはそこそこ長かったが
バスは次から次へやってくるので
このバスに立ってまで
乗る必要もなかろうと
ひとつやり過ごすことにして
次のバス用の列に並んだ
私達はその列では二番目だった
車掌がまだ乗れる旨
これから歩いてくる客に促し
立っても早く向かいたい若者が数名乗り込み
人の良さそうな老夫婦の前で
バスは満車になって出発した
程なくして次のバスが停留所に停車した
前の人が乗り込み
私達が乗ろうとすると
その老夫婦も続いて乗り込もうとした
真後ろにある並びに気付いていなかったのだ
「並んでるんですけど」
私達の後ろにいた子連れの親父が制止する
聞こえなかったようだ
「並んでるんですけど!」
もう一度、今度はキツめの声で怒鳴った
手をつないだ老夫婦
そのせつなさが胸に刺さって
私は
後ろを振り返ることができない
その便は結局
並びの人が全員乗り切っても十分なほど席は残っていた