「付き添いの婦人」
暑い日も寒い日も
その高齢の婦人は見舞いに来ていた
脳出血を患った夫の入院も
ずいぶんと長くなる
具合が良くなったかと思ったら
また悪くなって
退院できるかなと期待したら
また延期になって
そんなことが繰り返され
調子は芳しくないということを
病棟の事務員は知っていた
顔見知りになった婦人からも
うっすら弱音が滲み出る
きっと大丈夫ですよ
少し元気になったじゃないですか
よく食べてますよ
なんて
少しでも気が楽になればいいな
彼女はできるだけ寄り添った
そんなことが続いたある日の朝
婦人が満面の笑みで
彼女に駆け寄ってきて言ったのだ
やっと退院できるようになったのよ。
“ありがとう” って
手を取り合って泣いて喜びあった
二人の戦いはまだまだ続いていくのだろう
でも、ほんの少しでも前に進めたことが
彼女の中にあたたかい何かを
置いていった