100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「空白」

「お前は勝ち組だな」
二十数年振りの中学の同窓会で
そんなことを言われた
何をもって、俺が勝ち組なものか

そいつは
地元では有数の進学校に進んで
ラグビーをしていた
僕は
地元の平凡な高校で
無目的に時間ばかり潰していた

浪人時代にたまたま予備校で再会して
そのお互いの結果を知ったのは
たまたま会った春先の電車の中
リムレスの眼鏡をかけ
こざっぱりとした
ジャケットを羽織った彼は
神宮まで天覧試合を見てきたと言った
本人は意識していなかっただろうが
車内で結構大きな声で喋っていた
それは紛れもなく
力で勝ち取った自信から
湧き出てきているように感じて
もう眩しくて見てられなかった

その春 僕は 浪人二年目だった

それが彼に会った最後だったが
僕はこれから先も
彼にはなんにも
勝てないんだろうな って思った
そして年月を経るごとに
広がっていくだろう差に
焦ったりしたのに

そんな彼からの言葉だった
勝ちか負けかなんて
価値観の問題に過ぎないのだけれど

ただ
腐りもせず 道も外れず
地道に生きてきた
今までの自分をほんの少しだけ
褒めてやっても
まぁいいかなと その時思えた