100%な朝を迎える方法

平凡な毎日の何気ない出来事を切り取っていく

「せいぜい」

その古い写真に写る少年は
額にHと記されている
阪急ブレーブスの帽子を被っている

彼は一時期その帽子を被って通学していた
プロ野球全盛期で
多くの少年が人気のセリーグ
チーム帽子を愛用していたが
野球に疎い家庭の下育った彼は
興味をそんなに持ってなかった
そんなことはどうでもいいと言えば
どうでもよかったのだ

しかもその時球場で
プレーしている阪急球団は
すでに彼の帽子を
被っていなかった
つまり
型落ちで安売りしていたものを
野球帽など何でも同じものだと
母が適当に買ってきたのである

せいぜい野球好きな同級生に
揶揄されるだけである

そんな状況ではあったが
そんなご縁もあってしばらく彼は
このチームを応援していた
しかし東京でパリーグ
しかも関西球団の試合なんて
テレビで流れやしない

せいぜい夜更け近くの
スポーツニュースに
ちょっと出るくらいである

せめて彼らが自分と同じ帽子を
被っていたらいいのにな
とは思っていたが
そんな影響が
後の彼の人生に与えるものは

せいぜい父の会社主催の
ソフトボール大会に
むりやり連れていかれた際
バットの握り方を
大人達に鼻で笑われたくらいだろう

その集合写真に
バットを持たされて写る少年は
少しだけ切なそうだった